通りすがりの建物に猫がいた。白と灰色の毛が生えたふてぶてしい猫だ。実は以前からこの「食堂&カフェ」の前を通るたびに気にはなっていたが、私は猫があまり好きではないので入らなかった。しかも、店の看板には「猫に関するクレームお断り」と書かれている。猫だけじゃなく店もふてぶてしいのかと思っていたが、今日はなんとなくその「食堂&カフェ」に入ってみることにした。
カウンターが6席。それに小上がり席に10人ほど入れる程度のこじんまりとした空間だ。食事メニューは1つしかないらしい。好き嫌いのある客への配慮はないのか、と思ったが店主曰く、こだわりを詰め込んだ厳選メニューとのこと。店主が楽をしているだけではないかと思ったが、それで低価格を実現しているのであれば文句は言うまい。
奥の小上がり席では若者たちがボードゲームをしている。しかし、どことなく他人行儀というか、そこまで仲が良さそうな感じもしない。聞こえてくる話し声を聞くと、どうやらお互い初対面のようだ。このカフェではイベントを定期的に開催しているらしい。ん?語学交流会なんてものもあるのか。私はこれまで幾度も英語習得を志し、いつの間にか勉強をしなくなるんだよな、なんてことを考えていると、(!!!!)足に何かが触れた。猫だ。あの猫が足元にいた。私が「こんにちは」と話しかけているところで料理が運ばれてきた。
結構大盛りだなあ。料理を目の前にすると一気に腹が減ってきた。(すりすり)思えば朝から何も食べていないじゃないか。私はそれを一気に平らげてしまった。
店主がやってきて少し話をした。猫はオーストラリア滞在中に出会った捨て猫だったらしい。それを聞いて、私は「こんにちは」ではなく「ハロー」と声をかけるべきだったかもな、なんてことを考えていた。
この店の内装はどことなく全体的に手作り感がある。それは店主自身が施工を施した結果らしい。なんとなく居心地がいい、そんな気持ちになってくる。(すりすり)この店主が営む ICHIRO design, Inc. という会社は、侘び寂びと世界の文化を融合した新たなデザインを生み出す〜などと店主に馴れ馴れし語られたが、私にはよくわからなかった。ただ、本人がとても楽しんでいることは想像できた。
店主に「私が開設したYouTubeチャンネルに出演してくれないか」と言われたが断った。(すりすり)さっきからこの猫はずっと私に すりすりしてくる。私は店主に猫のおやつをオーダーした。なぜ人間の食事メニューが一つしかないのに猫のおやつがこんなに用意されているんだと思ったが、出てきたそれを猫に与えるととても喜んでおり、そんなことはどうでもよくなった。
店を後にした私は、どことなく満たされた気持ちになっていた。私の人生は特に劇的なものなんてないけれど、もし次、また店主の方からYouTubeの出演依頼をしてきたら、猫好きの私は考えてやらんでもない。
こちらは私たちが運営する「食堂&Cafe」を表現した短い小説です。
この小説を用いて私たちのWebサイトへ移動するQRコードを作成しています。
黒いところには句読点や要素の少ない文字を配置しないよう、言葉を選び直し、遠目であれば読み取ることが可能になりました。
QRコードを小説にするという我ながら面白い取り組みだと感じており、こういう仕事も請け負おうかな、とも考えましたが、かなり苦労するので迷っています。
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